しまった放置していた。
映画評論家の町山さんがネタバレありの有料ポッドキャスト(https://tomomachi.stores.jp/#!/)を始めて、それで知った「アンダー・ザ・スキン」はスカーレット・ヨハンソン主演だが、日本で公開のメドが立っていない。
先日、奇跡的に夢の中でこの作品を見ることができたので、前半までの詳細と感想を書いていく。
なにぶん情報が無い。TSP21という、聞いたことも無いニュースサイトからの引用。
ストーリー
エイリアンに身体を乗っ取られた美人のローラは車を走らせて獲物となる男を探し、妖艶な魅力で誘惑して同乗させ、捕食する。
以上である。
この「スピーシーズ 種の起源」(1995)丸出しのストーリー、本国では高評価らしい。
主演の、世界一のセクシー体型とも言われるスカヨハが全裸になったことにより、注目&売り上げが高まったようだ。なぜ日本公開が決まらないのか、それは明らか撮影・演出手法、つまりストーリーの語り口にある。話の系統は似ていても、ちゃんとした娯楽大作として制作しているスピーシーズとは間逆の、見ている人に説明しない、非常にわかりにくい低予算映画である。
スピーシーズ 種の起源は、B級の中でもかなりA級よりな顔で映画史に残っているエッチなSFアクションである。美人の身体に入り込んでいる宇宙人が男を逆ナンして、中出ししてもらって種を繁殖させるという、おもしろさとエロさをこれほどまでシンプルに融合させるか、という設定である。彼女の暴走を阻止しようとするのは、即席で組まされた便利屋・超能力者・学者たちのおっさんおばさん4人組。このストーリーにわざわざ、中年の恋愛話を入れようとするから、B級化に歯止めが止まらない。なのに設定の良さからか、無残にもシリーズ化までされてるんである。
そんな鉄板設定をシンプルに、スター1人を使ってまとめた本作。
まずは、そのスターと監督である。
スカーレット・ヨハンソン
10年ほど彼氏が居ないようなほとんどの人間を見下すようなオシャレなようなブスでもないような30代女子、を多数生み出すきっかけとなった戦犯映画「ゴーストワールド」(2001)のビジュアル担当として、高校時代に世に出たスカヨハ。84年生まれ。そのままの勢いでロスト・イン・トランスレーション(2003)でサブカル女コースに乗り、ゴーストワールドの主役だったソーラ・バーチに打って変わって前に出たが、抜擢された大作アイランド(2005)がユアン・マクレガーを巻き込みながら映画会社ドリームワークスを破綻させる程事故った為、はい結局はサブカル、となり、これで頭打ちかと思われた。
だが26歳にして、突然アイアンマン2(2010)にて、秘書と思いきやめっちゃ武闘派スパイである、ブラック・ウィドウという当たり役をゲット。今までこういう役が多かった昔のアンジェリーナ・ジョリーとは違う角度の、女ヒーローとして正式にブレイク。
包容力が高いのだろうか、その後アベンジャーズ(2012)のメンバーになったばかりか、キャプテン・アメリカ2(2014)にも同じ役で出演。LUCY(2014)でもアクション女優として、レオン(1994)のリュック・ベッソンに最大のヒットをもたらした。
アクションを主軸にして低予算映画にも出演。ドン・ジョン(2013)とかいう、ジョセフ・ゴードン=レヴィットへの、皆の幻想をぶっこわしてくれた糞にもヒロインとして出演。
そして、公開中のher/世界でひとつの彼女(2013)にも、携帯の音声・サマンサ役でアフレコ出演し、ローマ映画祭にて、声だけで最優秀女優賞獲得。この役は、始めにキャスティングされて現場にも来ていて役名にも採用されていた女優、サマンサ・モートンで録音していたものの、全てお蔵入りさせて、わざわざスカヨハで録り直すというタブーを犯してまで起用されている。そんな小悪魔agehaである。
バック・トゥ・ザ・フューチャー(1985)も似たように、途中までマーティはマイケル・J・フォックスではなく別の役者だったが、明るい人がいいからと、金を払って降りてもらったらしい。元のherにも払ったのだろうか。
また、今作でハダカ初披露とのことだが、2011年、元夫に送った自撮り写メがハッキング流出され、鏡越し背後フルショット全裸写メと、普通にやらしい顔した上半身裸写メ、二枚が既に無料で披露されてしまっていた。そして、えっ普通にそんなことする娘なんだ、という意味でも衝撃を与えた。
ジョナサン・グレイザー
監督。スカヨハとはオファー前から友達だったようだ。誰もが少しは見たことがある、ジャミロクワイのヴァーチァル・インサニティという曲の、PV監督である。日本では、別の映像畑出身と言うとカットが多かったり、色彩が派手だったりする印象だが、そんな中島蜷川連中とは間逆の、暗いことが美しいじゃんスタイルの監督である。ただ、これを正義と言い切れるようになったのは、エイリアン3(1992)でそれを押し通した結果、駄々すべったけどやりぬいたデビッド・フィンチャーの苦しみがあってこそである。
映画監督としては二作目。一作目、記憶の棘(2004)は、ニコール・キッドマン主演のショタ風味な大人ミステリー。夫が死んで10年後、夫の生まれ変わりと言い張る男子(10)が現れるが、本当に生まれ変わりなのか、この児童を愛していいのかを1時間40分かけて暗い画面でじっくり描写。最後の方の、見ている人を混乱させる、思わせぶりの連続をサクサク繋いで終わる描き方はすごい。結果赤字。
ストーリーの前半
なぜか今作も一作目と同じく1時間40分(100分)であるので、中間の50分までを書いていく。この映画、めちゃくそな割に、きちんとハリウッド三幕構成に従い、ミッドポイント(100分の場合50分時点)で、衝撃的な展開、ストーリーを反転させる事件、を入れているのである。三幕構成とは、日本で言う起承転結を、4幕でなく3幕(区切り方は1:2:1)にしたもので、その区切り方に従って脚本を書けば、一番見やすいとされているもの。アウトサイダーな顔しながら丁寧にも、これに基づいて構成してるんである。タイタニックでのミッドポイントは激突シーンである。
三幕構成については、いちお自分はシド・フィールドの本も読んだが、ウィキペディアで読んでも構わないのである。
オープニングはイメージショット。宇宙と片目の超アップから、映画は始まる。
田舎の夜道を走るバイク。道の端に止まったライダーの男は、なぜか川から女の子を担いで出てきて、小型トラックの荷台に入れる。トラック内は真っ白の空間になっており、その中でスカヨハは女の服を一式パクる。
早朝、ぼろいビルから出てトラックに乗るスカヨハ。ビルの上にはよー見るとUFOが飛んでいる。バイクを走らせるライダーとトラックを運転するスカヨハ。ライダーとスカヨハは、会話はしないが、タッグを組んでいるような感じ。
でかいショッピングモールで化粧品や服を買い足すスカヨハ。(モールの客は、カメラをちょくちょく見ているため、エキストラではない。ゲリラ撮影しているようである。)
街を巡回しながら、いろんな一人歩きしている男を観察するスカヨハ。車を止めて、若い男に車内から声をかける。「高速はどう行けばえん?」「えっとまっすぐ行って、信号を右折して、その後左折して、説明しづらい」「急いでるの?」「いいや」「仕事?」「人と会う」「そう、ありがとう」
また別の男に声かけるスカヨハ。「郵便局はどう行けば?」「郵便局?」「そう。どっからきたの?」「俺?アルバニア」「家族と一緒?」「そうだ。郵便局は、、、」
別の男。「すみません。迷ったんだけど、高速はどう行くの?」「この道を、、、」「あなた歩き?」「そうだ」「歩いてどこ行くの?」「家だけど」「家族の元へ帰るの?」「一人暮らしだけど」「どっから来たの?」「役場」「働いてるの?」「いや、自営業だけど」「送ってあげようか?」乗り込む男。「自営何してるの?」と、会話していくも、時間経過した車内で、男は居なくなっている。(説明シーンなのに、説明し終わる前に次のシーンへ行って、わかりづらくしている。)
治安悪そうな道で別の男。「この道をまっすぐ行って」「このタトゥー何?」「名前だよ」「名前は何?」「アンディだけど」画面外から甲高い女の声「アンディ!」逃げるように車を走らせるスカヨハ。
別の男が既に乗り込んでいる。「ここは治安悪いから声かけちゃダメだよ」「あーた彼女居ないの?」「居ないよ」「男前なのに?私はキレイ?」「もちろん」「よかった」
一軒家のドアを開けるスカヨハ。ラッキーラッキーと笑顔で入っていく男。声優のアイコの誕生である。
室内に入ると、またトラックの中のように、今度は全て真っ黒の空間になる。(この、一昔前みたいな、いかにもセットでやってます的な撮り方も、音楽・照明・撮影技術がめっちゃスタイリッシュなおかげで、ダサく感じないのである。)
歩きながら一枚ずつ脱いでいくスカヨハ。そのケツを眺めながら脱いでいく男。(ジャケットの下にサッカーのユニフォームを着ているので、ようやく、ここイギリスなんだ、とわかる。)
最後の一枚も脱ぐ男。普通にぼっきしたちんこモザなしが映る。その刹那、足元がタバコのタールのようになっていて、どんどん足元から床へはまっていく男。ギャーギャー驚く様子もなく、そのままタールに飲み込まれる。スカヨハは何事もなかったように引き返し、服を着ながらタールの上を歩く。(この、変なリアクションしない感じが、よりわかりづらくしている。)
まーた夜道を巡回しているスカヨハ。時間経過して昼の海へ。(ちなみに海に変わるところで20分。第一幕の終盤のこのシーンで第一ターニングポイントが訪れるという、定石の時間配分をまた使ってるんである。)
海には、遠くに一組の家族・旦那、嫁、赤ちゃん。そして一人で海から上がってくるウェットスーツ中年。
「俺のタオルを見張っててくれてたのか?」「いや、サーフィンどこですりゃいーか聞きたくて」「俺サーファーじゃねーし。テント張って本読んだり泳いだりしとるんよ」「どこから来たの?」「チェコ」「何でスコットランドに?」「逃げたくて。ここは何もないから」って話してると女の悲鳴。離れた場所で家族の嫁が溺れている。助けようと更におぼれかけている夫も居る。ウェットスーツは二人を助けようとダッシュ。タオルを捨てて海に入り、夫だけ何とか浜に上げるも、夫はウェットの善意無視でまた海へ。体力使いすぎて動けないウェット。静かな修羅場に不穏な音楽と共にゆっくり近づくスカヨハ。手ごろな石を持って、ウェットの頭をボロックソに叩く。ずっと引き画。泣いてる赤ちゃん完全無視で、ウェットを車に運ぶスカヨハ。ウェットを助手席に置いて走っている。全く下心が無い男も、こうして毒牙にかかった。
その夜、テントを片付けているライダー。テントの中に読みさしの本があることから、テント一式はウェットのものである。(ヒントが本しかないので、めちゃめちゃわかりづらい。本は別にアップにする訳でも無い。)
テントを背負って、先ほどの修羅場に行くライダー。夫婦は死んだようであり、赤ちゃんだけが暗い浜で泣いている。赤子完全無視でウェットのタオルを拾って証拠隠滅だけして帰るライダー。スカヨハとライダーコンビ、言い訳できないほどサイコパスである。
夜道を巡回スカヨハ。男を見つけ、今回はめずらしくトラックを降りる。しかしそこはクラブの前であった。ビッチ集団に腕を捕まれ、仲間扱いされて一緒に店内へ。店内観察するスカヨハ。(なんならここ、ものすごいスピーシーズっぽい)
クラブでは逆ナンするまでもなくナンパされる。「お姉さん、ちょっと待ってよ。さっきも声かけようとしたけど居なくなった。とても美人だから奢りたいんだ」「私もあなたを見てたわ」「嘘ばーよん。踊ろうぜ」「一人なの?」「一人じゃ」
踊ってたらシーン変わり、そのまま一軒家の真っ黒室内へ。そしてナンパ男は踊りながらタールへ。
タール内ショット。タールの中には先客が。栄養分吸い取られているのか、先客は身体シワシワである。そして効果音と共に、伊藤潤二のマンガみたいな描写で、一気に身体がペーパー状に。
タールは、人の皮膚以外の全ての内容物を吸い取る機能を持っているようであり、そのままベルトコンベアで挽き肉や骨のようなものがスタイリッシュに運ばれていく。
ここでようやく、このライダー・スカヨハコンビは人間の肉を採取、加工している宇宙人なんだとわかる。
日中巡回スカヨハ。
渋滞にはまっていると、バラをバラ売りしている路上花屋が窓を叩く。「あの人があなたにと」と、ナイロンに包まれた花を渡される。その花には花屋の血がついている。血を見て異常に引くスカヨハ。特にそれ以上何も無く、箸休め的シーンである。
ラジオでは、「海で家族が行方不明」とニュースが流れている。街を歩く着飾った女たちを観察するスカヨハ。
また男が助手席に。「キレイな目だね。唇もいいねー。なんというか、すばらしいねー」「そう?」
一軒家の前、帰ろうかどうしようかとビビりながらも、部屋に入る男。ルーティンである。
倉庫に立っているスカヨハ。ライダーがスカヨハをものすごい間近で観察している。片目をじっくり観察し、納得して去る。
倉庫を出ると日中街角、いきなりこけるスカヨハ。街中の男は「大丈夫かい」と何人かで起き上がらせる。スコットランドの商店街の人、人、人。(明らかゲリラ。つーか多分倒れたとこもゲリラ。)
夜道、車を止めると、ガラス越しに男が何か言っている。聞こえないので窓を開けようとすると、別の男がフロントガラスへ。輩たちが4,5人集まってくる。計画的に悪行しようとしていたのだ。車をユラユラさせる。車は開けられず、輩を振り切って逃げるスカヨハ。ある意味一番怖いシーンである。停車して別の獲物を待つ。
49分。前半ラスト。通った男に声をかける。「すみません。道に迷っちゃって」
話しかけた男は、顔面が奇形の病気だった。
後半、奇形やその他の新しい男たちと出会っちまったことをきっかけに、スカヨハの気持ちが、、、
という、世の男は不思議で、ヤリモクだけでなくいろいろいる。狂気に満ちたレープ犯も居るし、セックスはおまけとしか考えない紳士も、セックスは眼中に無いピュアな童貞も居る。俺はそのタイプである。宇宙人から見た地球旅行記というか地球人観察記、サントリーBOSSの、宇宙人ジョーンズみたいな話を、あほほどスタイリッシュに、無駄を省いてキレイに大胆に撮ったような映画である。
なんというか、芸能人と友達になって主演に置けば、こんな訳わからん低予算のものでも普通にA級作品として作れるという素晴らしさに気付けた。原作もあり、翻訳されている。表紙を見る限りでは、セクシーでない大人しい感じの女子が、中身は猟奇的な宇宙人だったという設定のようだ。
海外ライトノベルというジャンルで、読もうとしたが、アマゾン・楽天・ジュンク堂にも無い状況だった。
そしてこのブログを、何日もダラダラ書いては中断していたところ、あっけなく先日、日本公開が決まった。邦題は「アンダー・ザ・スキン 種の捕食」。
なぜ「スピーシーズ 種の起源」に寄せてきたのだろう。この惑星の住人は不思議である。
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