2014年3月14日金曜日

メン・イン・ブラック3(2012)

MIBは1(1997)、2(2002)、3まで全て同じ監督で、過去作にアダムス・ファミリー(1991)を持つバリー・ソネンフェルドという人のようだが、製作総指揮のスティーブン・スピルバーグの力加減が多いように思われる。
ファイナルカット権という言葉が示す通り、ハリウッドの監督は編集も好きにできず、上の人の指示に従って内容や編集を変更せねばならないが、製作総指揮より上は基本居ないため、誰にも邪魔されずに監督業に近いことができるらしく、なのでスピルバーグは、監督よりも製作総指揮の作品が多い、と、嘘が本当かわからんがネットで見たことがある。実際には製作総指揮の仕事はかなりあやふやなようで、現場に張り付き渦の中心に居る場合もあれば、スタッフ試写にだけ来るだけの場合もあるようだ。

このシリーズの素晴らしいところは、やはりエンタメ性の高さである。「陽気な黒人」と「都市伝説」という、B級臭い要素を元ラッパーのジブラ兄さんじゃないわウィル・スミスを得たことにより大成功させた。例えばバック・トゥ・ザ・フューチャー(1985)も同様、公開前はマイナーなB級要素が強いためヒットの見込みがなかったという。現在は親ばかになって息子と娘を売り出すことばかり考えているウィル・スミス。アフターアース(2013)でのKYさとでくの坊ぶりがパないが、このシリーズばかりはウィル・スミス以外の誰が演じても成功しなかったであろう。そしてウィル・スミスもこれが無ければここまで成功しなかったであろう。今作とウィル・スミスの運命的出会いは、小学生当時、ソフトバンク無き時代にほぼ黒人初体験であった我々世代に、黒人かっけーし面白れー、という印象を与えた。大人になって東京に出てきて、黒人が基本こんなに恐ろしいものとは思いもしなかった。ウィル・スミスどころかエディ・マーフィーなども一人もおらず、全員ジャンゴだった。

そもそも、土台になっているのは、「UFOを見た後は、グラサンの黒服が事情を聞きにくる」という、だからどしたんなという都市伝説である。これを再現する貧相なおばさんのシーンもあるが、非常に短い。
バック・トゥ・ザ〜も、生まれた最初のアイデアは「勉強、勉強とうるさい親だけど、高校時代を覗くとテストでカンニングしてた」という糞つまらないもの。カンニングシーンは特典DVDには入っているが、ファイナルカット権によってか、本編では切られている。そしてその二つを切った犯人と思われるのは、製作総指揮のスティーブン・スピルバーグである。更に両作品とも「ママ。あれ見てー空飛ぶ車だよー」「何言ってるのこの子は」といった、アメリカ人以外の感性の人にため息をつかせる、ドヤァシーンが無い。そして恋愛ドラマも無い。特にMIB1のヒロインである非・小保方晴子さん系女検視官は、人生に男を必要としない死体オタクな美人キャラとして異彩を放ちすぎている。更にファッション性である。バック・トゥ・ザ~のマーティの赤いベスト、そしてMIBは喪服。インディペンデンスデイでのウィル・スミスなど、私服はオレンジのニッカポッカである。
この絶妙のさじ加減でSFを作る稀代の天才が製作した近作は、日本で2015年公開されるであろう、クリストファー・ノーラン監督がタイムスリップに挑む本命作、インターステラーである。

MIB1の魅力、それは視聴者が自分の常識と違う、知らない世界にエスコートされる点。宇宙人たちはなぜか創価同士のように、お互いがそうであるとなぜか把握している宗教的な点、更によく苦情が来なかった、宇宙人の動きが身障者にしか見えない点。そんな1に比べ、2がなぜか完全なコメディになってしまい全く面白くない。今作3は、その反省を生かしてか面白くなっていた。1が設定紹介になり2以降が楽しめる作品と違い、「知ること」を楽しむ本作は、どう考えても1を超える作品を作ることは難しい。それでも3は頑張った。
悪党が宇宙人の兵器で過去に戻り、自身を逮捕した主人公の相棒、トミー・リー・ジョーンズ演じるKを殺すと、現代は宇宙人に征服され始める。過去に戻って相棒を守り悪党を殺すため、ウィル・スミスは悪党と同じ方法で60年代にタイムスリップする。飛躍的にスケールがでかくなった世界を、なんとか上手くまとめあげた。単純にジョーンズがアクションができない故だろう、ヤング・Kに抜擢されたジョシュ・ブローリンの憑依演技もすばらしい。
だがラストの辻褄を1に合わせると、1のあの見初めるシークエンスの意味が、、、まぁ面白いから許すが。

他の作品では、ゴーストバスターズ(1984)やその追従であるエボリューション(2001)、陰謀のセオリー(1997)が似ている。
ゴーストバスターズは言わずもがな、面白い奴らがモンスターを殺しまくる点、そしてラスボスが笑かしにかかってんだけどスベってる点である。バスターズは巨大なマシュマロマン、MIBは巨大なゴキブリである。
陰謀のセオリーは都市伝説が本当に起こってしまうという点。統合失調症気味の中年が都市伝説を信じまくっているが、しかしそれが本当で、CIAに追われ始めるというもの。メル・ギブソンの深いシワと天パ具合が派遣とか行ったらいる、45歳くらいのヤバイやつに似過ぎていたせいで、リアルすぎると評価されずに終わった。

そして更に似ている映画がやってきた。ゴースト・エージェント/R.I.P.D.(2013)である。悪徳警官を相棒に持ったが為、純金を横領してしまい、その相棒に殺される主人公。死後の世界に行く途中で取調室のような部屋にすべりこまされ、世界に紛れ込む幽霊退治をするために組織されたR.I.P.D.に所属させられる。死語そっち側で新しい相棒と組むが、その相棒は西部開拓時代に死んだおじさん。それをビッグ・リボウスキ(1998)のジェフ・ブリッジスが、最高なことにあのキャラまんま演じている。
アメリカが本気でスペックを作ったらこうなるような、エンタメの見本を見たようで、正直むちゃくちゃおもしろかったのだが、評価も収入も最悪である。ヤフーレビューを見るとやはりMIBに似過ぎていることが原因のようだ。俺がそれを気にならなかったのは、誰も若者数人が出るホラー映画をスクリーム(1996)のパクリだと言わないように、俺の中でMIBがバディものコメディの定番に、脚本の手本になりすぎているからである。

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