2014年2月26日水曜日

ロスト・ハイウェイ(1997)

世代ではないので当時の事は知らないが、日本でもツイン・ピークス(1990~)というドラマが、「24」(2001~)のように一般視聴者の間でもブームを起こしたらしい。
田舎の、街一番の人気者女子高生が撲殺された事件を主軸とし、薬、超常現象、近親相姦と、様々なヒントを拾って展開していくという、グロくて非常にわかりにくいドラマがヒットしたのは、牧歌的なのに不気味な雰囲気や、サブプロット(メインでないプロット)の面白さからだろうか。ツイン・ピークスとX-ファイル(1993~)を混ぜ合わせ、日本風ギャグを加えればケイゾク(1999)、トリック(2000〜)、SPEC(2010〜)の堤三部作となるだろう。やはりわかりにくくて不気味なものというのは、大衆を惹き付ける何かがあるようだ。圧倒的な技術力はもちろん、何を見せないか見極めるセンスが大事なように思う。
そして三部作といえば、デヴィッド・リンチ監督がツイン・ピークスの後に同様の手法で撮ったロスト・ハイウェイ(1997)、マルホランド・ドライブ(2001)、インランド・エンパイア(2006)の意味不明三部作である。
今作は特に、ブルーベルベット(1986)、そしてツイン・ピークスという田舎を舞台にした前作・前々作から、突如都会に舞台を移したので、デヴィッド・ボウイのテクノ風オペラをBGMにひたすら夜道を疾走するというオープニングからもわかる通り、非常にスタイリッシュで攻撃的になっている。そして収入は予算の五分の一という大赤字になった。

玄関先に家を盗撮されたビデオテープが続けて届き、嫁と共に怯えるミュージシャン。警察に届けるが、3本目のテープではミュージシャンが嫁を殺している映像が映っており、嫁殺しで逮捕される。だが死刑執行予定の監獄の中で、ミュージシャンはなぜか気のいい不良の自動車整備士のお兄さんに変わってしまい、しかたなく釈放される。彼はマフィアのボスの女に一目惚れ。だがその女は髪型以外ミュージシャンの嫁そっくり。
上記は前半のあらすじだが、全く意味がわからない。嫁が黒幕だとか白幕だとか、そんな次元の話ではない。ただしわからないながらも、何か面白いので普通に楽しめてしまう。そして悲しいことに楽しめてしまった人に勝手に解釈され、とんでもない映画がやってきたと祭り上げられる。蛇にピアスの作者・金原ひとみが、今作をベスト映画に挙げ「すべて必然性がある」と言っていたのは何を言ってるんですかこの人は、と思った。
だが蓋を開ければ、手品の種明かしのように、何だそんなことかと理解できる。金原ひとみも開けたのだろう。
リンチ映画の中でも最も有名で人気のある、マルホランド・ドライブの種明かしをしている本はいくつかあり、「時計じかけのハリウッド映画」「アカデミー賞を獲る脚本術」が詳しい。あえて説明すれば、構成を破綻させているのだ。①売れない女優の苦しい現実→②理想の自分の妄想→③自殺。この段取りを、②の妄想を120分見せた後、①③の現在の現実とその回想を混ぜた第二部が始まるので、理解できなくなる。何の説明もしてくんねー。フラッシュバック使えや!という不要な老婆心を抱かせる。②の妄想120分はTVドラマのパイロット版として単体で作ったものなので、そもそも妄想ということ自体がリンチの後付けなのだが。
今作ロスト・ハイウェイについては、映画.comで評論家の町山さんがデヴィッド・リンチにインタビューした事で、蓋が開いた。O・Jシンプソン事件という、日本では類を見ない、芸能スキャンダルが94年に起こった。O・Jシンプソンはアメフト選手出身の俳優で、最近シュワが「ターミネーター役が自分に来る前は彼が内定していた」と明かしたほど、それなりに芸能人として芸能界に居たようだ。赤井英和みたいなもんだろう。だがなんと、嫁を殺して警察とカーチェイスしてヘリで中継されながら逮捕され、そしてなぜか無罪になるという田代まさし以上の祭が開催された。
後にデヴィッド・リンチはTVにのほほんと出ているO・Jシンプソンを見て、何でこの人は妻殺しといてこんな余裕なん?と、あそうかこの人は別の人間が妻を殺したと思い込んでんだ、自分の中で自分とは違う別の人格を作っていたんだと、勝手に解釈したのである。シンプソンからすれば、どうしてそんなにおおきくなっちゃったんですかー?解釈。である。真面目にやってこなかったからである。
そしてそれを、ただの実際の事件をモデルにしたフィクションを、何の説明もせずにいきなり、同じ人物であるという設定の男が役名も役者も変わって出てきたりするから訳わからんくなる。でも楽しい。
ツイン・ピークスの前にブルーベルベットで見せて、今作以降は封印した、現実性の無い、登場人物の気持ち悪すぎる死に様、そしてマルホランド・ドライブにも通じる出自不明の登場人物のハッタリ、美しキモい悪女役のパトリシア・アークエットの存在感。この波に乗れるかどうかの簡単な選別方法として、この三部作とツイン・ピークスの源流である、ブルーベルベットの、更に源流になっている曲、「BOBBY VINTON-BLUE VELVET」をYouTubeで聞いてみることをオススメする。この曲の気持ち悪さに魅力を感じることが出来れば、後は快楽が待っている。ちなみにパトリシア・アークエットは、バッファロー66(1998)のビッチ同級生役やパルプ・フィクション(1994)のピアス女役を演じたロザンナ・アークエットの、実妹である。
訳わからんが魅力満載で、三作通して見ればデヴィッド・リンチ、そして映像表現の魅力に気付くだろう。見た後のネットの解説検索は必須だし、読むのに本編ぐらい時間がかかるかもしれないが。


2014年2月19日水曜日

Happy Science

その映像は大雨や雷以前に、俺と中野くんのテンパリ加減がパなく、「カメラ濡れっから!」とか「もっかいお願いしまーす!」とか「え何がダメなん!?」といったような、怒号やただの合図が飛び交っていた。中野くんが監督して頓挫させた映画で、唯一手元に残された映像である。
無関係の知人たちにこの映像を見せると、これ自体を一つのビデオアートとして捉え、知り合い補正もだいぶあるだろうが今までに無いほど笑いをとれるのであって、調布映画祭の為に撮る企画に、この声はそのまま採用されるべき、とのご意見が多数あり、俺と中野くんが役者として出演し、そのまま映像を撮影している人たちの物語として撮ることに相成った。
宗教団体である幸福の科学のプロパガンダアニメ映画・仏陀再誕、その予告編の「我、再誕す」というセリフも自分達の中で流行っており、これも取り入れることになった。
大雑把な案を私のゴーストに伝えたところ、やはり私のゴーストライターは天才である。『大雨』と『役者がいる緊張感の中テンパる人たち』と『仏陀再誕』。この要素だけで、富井はこれを生かしきったシナリオをひりだしたのである。それを要約する。

1.日本が干ばつ被害で水不足になっており、海外から水を輸入している世界観。
2.それにより幸福の科学のような団体・ブッダ教が駅前などで頻繁に「ブッダが再誕して救ってくれる」と演説している。中野はその宗教の家系だが、まわりには隠している。
3.中野と、専門学校の後輩の土井はミュージックビデオを制作する業界に居るが、中野はフリーターに甘んじている。土井が現場のバイトを誘っても断る。
4.中野はよく運動をしに行く公園で、過去憧れていたミュージシャン・戸野と知り合い、なぜか好かれ、低予算ミュージックビデオの監督を任される。ミュージシャンはハイ・スタンダードの難波がモデル。
5.中野は土井と、専門時代ちょっと好きだった女・鳥羽を巻き込み、戸野のPVを制作することにする。戸野は自分たちの世代の憧れのアーティストであり、皆興奮するが、中野の準備不足のせいで全くうまくいかない。
6.彼らは空中分解しかけるが、中野が皆の前で、必ずいい作品を作ると演説する。ブッダ教の家系であることも告白するが、誰も軽蔑せずに受け入れてくれる。戸野も同調、また仲直りして撮影再開、鳥羽ともいい感じになり幸せの状態になる。
7.改めて撮影を始めたタイミングでブッダが「我、再誕す」と人々の心に現れ、干ばつの日本に大雨を降らせてくれる。例の映像ここで使う。
8.雨と雷とテンパりのせいで結局撮れない。一転してあれだけ協力的だった戸野がキレる。全員キレて帰宅する。
9.絶望した中野は悪魔のメイクをして全員を殺し、性的にいたずらもする。
10.この、近年稀に見る残虐な殺人事件と、犯人の信仰が関係しているのではないかと、ブッダ教は批判されるが、この事件は中野個人が起こした事件であり、ブッダ教は関係ないという説明が入る。今までの映像はブッダ教の勧誘ビデオだった。

以上である。役名中野と土井はリアル中野土井とほぼ同じ立場であり、富井は逆に創価2世であり、中野くんはそれ故にハイスタやダークナイトに憧れており、しかり中野くんは熱いイケ面に好かれやすいのであり、それらがシナリオに反映されいる。
中野が好きになる鳥羽役は、マンキツの同僚の女優・鳥羽さんであて書きしていて、舞台等で忙しいらしいがOKいただいた。
そして実際の豪雨映像に出ている吉岡さん。この人が出ないと意味が無い。吉岡さんに「あの映像を眠らせたくない」「教団を糾弾したい」と、根も葉もない誘い文句をメールし、「教団に目をつけられなければいいね」と、OK頂いた。見るわけねーだろばか、とは思わず、まずは簡単なところから撮影しようと、俺と中野くんと富井で、俺と中野くんしか出演しないシーンから撮り始めることにした。
その撮影日前日のタイミングで、突然どしたお前雰囲気悪なるやろお前やめろお前と、思うかもしれないが、うちの父親がクモ膜下出血になったのである。結果的には後遺症も残らず存命しているが、その時は命危ないかもしれんと、俺は弾丸的に実家に帰ったのである。
親戚一同も病院に到着しており、俺がその輪に加わると皆口々に、しょうごや、しょうごがきた、ようきたなしょうごと、不安を掻き消すように俺の歓迎を始めた。そして二時間も経たぬ間に、父は死なないことが確定した。母が看護師だったのですぐ症状に気付き、助かった。ベタな展開に皆で胸を撫で下ろし、忙しい母の妹などはすぐに帰宅することになった。
叔母に便乗し、もちろん俺も帰京しようとしたところ、親戚一同から猛反発を食らった。「母が病院で父に付きっ切りになるんじゃから、おばあちゃんが家で一人で不安じゃろ、一緒に家におれ」という理論である。
がしかしである。自分は芸能という親の死に目を見れない職種を目指してやってきたのここ東京に、という身である。顔をゆがませる一同を用事が、あるから、と切り捨て、駅に向かったのである。親戚に嫌われるということは友人恋人に嫌われるのとレベルが違い、死ぬまで疎外感を感じるかもしれない。がしかしである。私は監督である以上自己都合で延期させるわけにはいかんのだ。と、駅に向かい、東京へ帰り準備を済ませ翌日、綾瀬一軒家に向かった。綾瀬には誰も居なかった。富井はすぐに撮影場所であるこの自宅に戻って来たが、出演者の中野くんは現れない。携帯も通じない。そのまま夜になり、日光は消え、撮影はできなくなった。いわゆるゴールデンタイムに、中野くんは戻ってきた。
聞いてみたところ中野くんは、自分が壊した永山の車のヘコみを直しに、撮影日に一日中カーコンビニ倶楽部に行っていたのだ。俺もこれから親戚一同に嫌われる人生を、ヘコみや傷を、親への自責や負い目を、カーコンビニ倶楽部で直そうと、すぐにケータイをパカったのである。


2014年2月15日土曜日

モンスター

妖怪ペシン。
そんなもののけが、ここ綾瀬に出没するという。コンノさんがなぜか女性と住むことになり、五人で住んでいる一軒家から退去することになった。引っ越しを手伝って欲しい旨を他の同居人に告げ、マスオカ、富井、中野くんは引き受けることになった。
当日、永山から車を借りて積み込み作業をしようとするも、マスオカと富井は気が乗らずやらないでいた。彼らは特にバイトや用事があったわけではない。あらゆるイベントを、かなりの割合でサボって生きているのである。女性に関しては無論、一夜限りの行為はあろうとも彼女など願い下げである。連絡先を交換せぬ。そうか逆にそうすればええんか、状態である。例えば風俗嬢とアフターする場合、場所と時間だけで待ち合わせる。彼ら彼女らの行っても行かなくても何も変わらないラフさによる性交の成功は、SNSや携帯を全否定することにより生成される時代の捻れから生まれていた。孤独を愛するのにルームシェアしているという矛盾を孕みながらも、サボっていたのはそんな、彼女と出て行くことにより関係を単純化するコンノに対する対抗意識からかもしれない。
中野はそんな彼らを「無責任な奴らなり。一回やるって言ったんだから俺は手伝うなり」と、永山の車を一人で運転していた。コンビニに寄り、駐車場から車を出す際、コの字型のよく中学の頃に座っていたオレンジのやつに当てた気がした。振動や音から、それは気のせいで無い確率が高いが、中野は現実から目を逸らし、一途に前を見て何事もなかったように一軒家に戻った。
マスオカと富井は車が戻ってきた様子の雑音の後、聞きなれぬ、ペシン、ペシン、ペシンと、繰り返される妙な音を聞いた。怖いなー、何かなーと、音源を辿り玄関に出ると、車のトランク部分が完全にへしゃげたのを見た中野が、何度もおでこを叩いていた。
妖怪ペシンの正体は、自らのひたいをひたすら叩き続けていた中野であったのだ。
コンノさんはその後別れて戻ってきた。

2014年2月5日水曜日

第86回アカデミー作品賞予想

去年のアカデミー賞作品賞候補作が(リンカーン以外)どれも面白かったので、今年は初めて発表が楽しみになった。1月半ばに2013年の作品が対象の、第86回アカデミー賞のノミネート作品が発表されて、今年はけっこう見てるので、作品賞のみネタバレせずに予想。
受賞作発表は3月3日です。
ちなみに去年(2012年作品対象)の作品賞候補。
左上から、
「リンカーン」→スピルバーグによる本命作品と言われていましたが、どう楽しめばいいかわからなかったです。ただ、アカデミー賞はおもしろかったで賞ではなく、芸術性と科学性(技術)を支援する賞なので本命なのもわかります。あと投票者である会員に、てか映画界に、ユダヤ系の人が多いらしく、同じくユダヤ系監督作品が強くなるそうです。近年だとアーティスト(2011)です。
でも内容は低学歴にはマジ糞です。ジョセフ・ゴードン=レヴィットの無駄遣いだと思います。ダウンタウンのリンカーン2時間見た方がいいと思います。

「ゼロ・ダーク・サーティ」→ビン・ラディン暗殺作戦の映画化です。ドキュメント寄りでカタルシスも糞もありませんが、意外にかなり楽しかったです。媚びないことにより、結果エンタメになるという作風です。
CIAが水責めの拷問をするシーンがタブーらしいけれども、これもアメリカ人以外にはどうあかんのか不明です。もっと爪とかはいだりしてもいいと思います。

★「アルゴ」→受賞。イラン米大使館人質事件を映画化した作品です。エンタメ寄りで、CIAが正義というゼロ・ダーク~とは真逆の映画です。
ベン・アフレックが監督賞ノミネートに入ってなかったため、受賞は無いと番狂わせさせやがりました。監督賞ノミネート作は会員の中の監督が決めるらしく、確かに玄人受けはしない演出だし、20歳そこそこで書いた脚本がアカデミー脚本賞とりやがったし、俳優としても史上最もおもしろい映画アルマゲドン(1998)に出たし、その後調子乗りすぎて干されたバカだし、皆かわいそう、と思って作品賞に投票してあげたのかもしれません。その同情票として挙げた手も、新バットマン役をまかされたことにより、調子乗んなと、怒りの拳として振り落とされます。

「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」→インドの少年が主演の、ファンタジー寄りサバイバル宗教映画です。これ実話?って聞かれるけど、その質問自体がネタバレになるから答えられないという、ある意味泣かせる映画です。
これぞ映画を見たという感じのラストでした。前田敦子さんは「感動 本当に動物ものには弱いです私」とツイートし、全くラストの意味を理解してませんでした。

「ジャンゴ 繋がれざる者」→普通。黒人奴隷が殺人マシーンに養成される、アメリカの恥部を舞台にした西部劇アクションです。タランティーノ監督は前作イングロリアス・バスターズ(2009)から、映像のオシャレさを捨てたんじゃないかと思います。これはそういう作品だからとかそんなんいらないです。脚本賞受賞です。

「レ・ミゼラブル」→普通。めっちゃ展開早いです。あー無情です。アン・ハサウェイが助演女優賞取った時のわざと驚く態度で、こいつ性格悪いんじゃないか説が出ましたが、俺はプラダを着た悪魔(2006)のインタビュー時点でこいつの性格が糞な事に気付いていました。映画のDVDを千本所有している前田敦子さんは4回観て4度泣きました。

「世界にひとつのプレイブック」→監督・作品・脚本・全演技部門ノミネートの、化け物作品だけど全く客入ってませんでした。メンヘラと癇癪もち美男美女のボロボロ恋愛映画に救われた、というブスブサイクも多いんではないでしょうか鏡みろ。天才監督が『ラブコメ』という、ハードルが下がりきった枠を使って傑作を撮った、エターナル・サンシャイン(2004)のような映画です。
結果、受賞は主演女優のジェニファー・ローレンスのみにとどまりました。本当に演技だけで勝負するやつが出てきたって感じの若干23歳の才女ですが、受賞スピーチの壇上に登る途中、階段で盛大にこけるというアニメっぽさから本当にメンヘラの可能性があります。

「ハッシュパピー ~バスタブ島の少女~」→貧民の島に洪水がくるお話です。監督は20代で作品賞・監督賞候補です死ね。ファンタジーさが隠し味的に入っているあの感じです。

「愛、アムール」→異例のノミネートの非英語作品です。前々回受賞のアーティストもフランス映画ですが、セリフ無かったんです。
老老介護をテーマに老人の究極の愛、いや究極のアムールを描きます。この変態、ハネケ監督はピアニスト(2001)の方が好きです。むしろピアニストは退屈になるけどマジ見た方がいい作品です。

作品賞候補以外のよかった作品。
「ザ・マスター」→主演男優、助演男優、主演女優ノミネートでしたが外れました。先日亡くなったフィリップ・シーモア・ホフマンは、ジャンゴのエリートチビに助演賞取られました。作品全体に漂う迫力と狂気。近年で一番好きな作品です。老人ばっかの下高井戸の劇場でもウケていたので驚きました。
トムクルも熱心な活動をしていて大塚のピンサロ街に日本支部がある、宗教団体・サイエントロジーの映画です。いつか賢者タイムに「あ、映画見たんすけどー」と、バカのフリして入ってみようと思ってます。トムクルも、え、三千?フェラで?と、大塚の物価はアメージング!と、来訪の度に驚いてると思います。
ゼロ・ダーク~と本作は俺と同い年の、世界的ボンボンの娘、ミーガン・エリソンが制作費を払っています。ありがと。


「ムーンライズ・キングダム」→脚本ノミネート。内容はどれも似たり寄ったりですが、余すとこなくおもしろい作品ばかりのウェス・アンダーソン監督です。前回ロイヤル・テネンバウムズ(2001)でノミネート時は同級生のオーウェン・ウィルソンと共同脚本でしたが、相棒が自殺未遂した今回はコッポラの息子と共同脚本です。タラ同様、持ち味の映像演出(背景ボカさない、カットバックしない)を止めました。何で?
ちなみにコッポラ息子は、こいつと妹を手伝いすぎてCQ(2001)以来、全然監督やってませんでしたが、先日新作がレンタル開始されたそうです。
自殺未遂したシャンハイヌーン。頑張れ(禁句)。


以上が去年です。

今年、本命と言われているのは三つ。「ゼロ・グラビティ」「アメリカン・ハッスル」が10部門ノミネート。ゼロ・グラが技術系、ハッスルが演技・演出系。次いで「それでも夜は明ける」が主演女優賞以外の主要部門で9部門ノミネートです。

作品賞ノミネート
「アメリカン・ハッスル」
「キャプテン・フィリップス」
「ダラス・バイヤーズクラブ」
「ゼロ・グラビティ」
「her 世界でひとつの彼女」
「ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅」
「あなたを抱きしめる日まで」
「それでも夜は明ける」
「ウルフ・オブ・ウォールストリート」

ウチ見たのがの五つ。見てないのはどうしようもないのでこの五作品内で予想します。夜は明けるは夢の中で見ました。

見込みが低い順に。
△キャプテンフィリップス
+助演男優+脚色ノミネート(以下技術系は切り捨て)
お子様にワンピースと交互に見せるべき、アメリカの船が海賊に襲われたマースク・アラバマ号事件の映画化です。海賊役のソマリア系が、引くぐらいナチュラルなので暴力団排除条例とか引っかからないか心配になりましたが、悪ルフィは助演男優にノミネートされたので、本業こっちかと安心しました。監督はグリーン・ゾーン(2010)の人です。
社会格差を問題提起してますが、基本アクション映画なので賞は無いと思います。
画像がジャン・レノに似すぎているトム・ハンクスは、アカデミー会員の俳優部会理事で、俳優が全会員の三割を占めるので、アカデミー賞においてかなり権力を持っている様子です。こっちからしたらフォレスト・ガンプ(1995)のイメージしかないです。あの本能のままにする無意識のセックスもっかいやってください。あれめっちゃおもしろかったんで。

△ウルフ・オブ・ウォールストリート
+監督+主演男優+助演男優+脚色ノミネート
『ウォール街狂乱日記 「狼」と呼ばれた私のヤバすぎる人生』というバカホイホイのタイトルがついた株ブローカー実録本の映画化です。究極の与沢伝説をひたすらハイテンションで見せまくります。ディカプリオが仲間に質問する「このペンをどうやって客に買わせる?」の答えが、この人たちの生き方を全て表しています。この答え、いつも客側の立場なので本当くやしいです。あと親友がデブでムカつく。
同年プリオがロミオ+ジュリエット(1996)の監督と再び組んだ華麗なるギャッツビーですが、こちらは美術賞候補止まりで、華麗に無かったことにされました。プリオにとってはヘアジャム程度にしかならなかったようです。
狼、編集があまり繋がってないし、伝記物としてはブロウ(2001)の方がいいし、同監督の同系統作品としてはグッドフェローズ(1990)の方がいいし、乱交作品としてはムーディーズファン感謝祭バコバスツアー(2003~2013)の方がいいです。しかし、金・薬・女 オア ダイだけで終わらない、プリオ、スコセッシ監督、そして原作者のエネルギーがみなぎる映画です。ただ、別にアカデミー賞取る映画ではないと思います。
どう頑張って作品&自己をプロデュースをしても主演男優賞を取れないプリオが、いよいよ諦めて今作以降休業するようですが、もちろん今回も取らせないであげてほしいです。

▲ゼロ・グラビティ
+監督+主演女優ノミネート
よく邦題が批判されている、今回の賞で一番有名な映画です。宇宙で遭難する映画なんで、邦題は「ロスト・イン・スペース」でよかったんじゃないでしょうか。
監督のアルフォンソ・キュアロンは、日本映画パシフィック・リム(2013)のギレルモ・デル・トロ監督と同じく、今勢いのあるメキシコ人監督です。有名になった「天国の口、終わりの楽園。」(2001)は、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ(噛んだら殺す)のアモーレス・ペロス(2000)によるガエル・ガルシア・ベルナルブームに乗っかって輸入されたような作品ですが、確かに伸びしろは、あのときからキュアロンの方があったのかもしれません。マイナスポイントとして『ほとんどがCGの作品は、今後俳優がいらなくなってくる事を暗示させるので、会員の三割を占める俳優は投票しない』と、ニコ生で聞きました。あと脚本賞に入ってないです。でも去年のライフ・オブ・パイのアン・リー監督からの流れで監督賞は取りそうです。

○アメリカン・ハッスル
+監督+主演男優+主演女優+助演男優+助演女優+脚本ノミネート
偽のアラブ人を使って役人を囮捜査したアブスキャム事件を映画化です。とにかくこの監督の前々々作ハッカビーズ(2004)が大大大好きなので、一番頑張って欲しいです。
ユダヤ系監督のデビッド・O・ラッセルは有吉のように一発屋の後、地獄から上がってきた監督です。人は、キリストが復活したよーに、復活した人を応援してしまう習性があるみたいです。
そもそもこの監督はデビューから二作品で、ウェス・アンダーソンと共に、重要なアメリカ監督何人とかに選ばれていた非ヲタの天才にも関わらず(古いのでソース見つからず)、二作目で影響力の強いジョージ・クルーニーにキレて、三作目では女優にキレまくる映像が流出し(「Lily Tomlin Freakout」で検索!)、干されました。しかしその後ザ・ファイター(2010)で、主演もしたマーク・ウォールバーグに拾われ、そこからオシャレコメディを捨て、四作目からは三回連続監督賞・演技部門賞ノミネート。ウォールバーグは人の目を潰したことがあるレベルの武闘派なので、目が命の監督はキレなかったようです。
その高みを目指す演技指導からか、一般的には『俳優に賞を取らせる監督』として有名です。今回も、昨年の世界にひとつのプレイブック同様、出演者を全演技賞にノミネートさせてます。特に助演男優にノミネートされたブラッドリー・クーパーは風俗嬢から絶大な支持を得てます(土井調べ)。中年になって自主から這い上がってきた右端のジェレミー・レナーに至っては、全くこのコンボに乗れてなくて、ごめんなのび太、四人乗りなんだ状態です。
未だにジョージ・クルーニーのオープンないじめが続いているのか、O監督は去年ほぼほぼ無視されましたが、クルーニー不在の今回は堂々と立ったり座ったりしてもいんじゃないでしょうか。あ、あいつゼロ・グラ出てた。O逃げて!

◎それでも夜は明ける
+監督+主演男優+助演男優+助演女優+脚色ノミネート
色んな意味でフリーで活動してたのに、騙されて12年間奴隷になったインテリ黒人の手記が原作です。奴隷の人は字が書けなかった人が多いらしく、手記がこれぐらいしか残ってないそうです。とにかく完成度が高くて、編集、画作り、演技、全てすばらしいです。そして何にも似てません(あえて考えるなら最近のPTA監督っぽいです)。ベネディクト・カンバーバッチとマイケル・ファスベンダーというキてる二人を悪役に置くセンスもキてます。
過激描写は、ジャンゴを見ていたのでそこまで衝撃じゃなかったですけど、それより日本でも北朝鮮に拉致られることがあるそうなので、現実にある恐怖を思い起こしました。
去年のアルゴはジョージ・クルーニーがプロデューサーでしたけど、今作はブラッド・ピットがプロデューサーです。ブラピと元嫁のフレンズ(ややこい)が作った制作会社プランBは、過去にキック・アス(2010)、ツリー・オブ・ライフ(2011)、ジャッキー・コーガン(2012)、ワールドウォーZ(2013)という、てめぇのセンスマジか、というラインナップをコンスタントに制作しています。ブラピは母親がアンチ黒人らしく、それに逆らった親子喧嘩が最高傑作を生み出しました。これだけのものを作れば監督も、お母さんによろしく、っつったでしょう。あとジョー・ブラックによろしく、っつったでしょう。監督はスティーヴ・マックィーンというダレノガレ明美ぐらい名前で得してる人です。一見あの人?
と思わせて
こいつです。何を揉もうとしとるのか。
有力とは言われてますが、やっぱこれもアメリカの恥部だし、アメリカの宣伝をすべき場所では難しいのかもしれません。だからこそ作品賞はもちろん、アカデミー初の黒人監督による監督賞を願います。でもニコ生では『主人公は巻き込まれ型な上、中盤、傍観者になる。史実通りだが創作のタブーを使ってる箇所がある』と、冷静に指摘されてました。

最後に、受賞は無いにしろ期待させられる作品。
「her 世界でひとつの彼女」
マルコヴィッチの穴(1999)からのスタートダッシュが良すぎたのか、最近は失速加減がパない元天才スパイク・ジョーンズ監督です。スピード落ちすぎて菊地凜子ともセックスするようになりました。バベル!っつってます。去年、ザ・マスターで好きになったホアキン・フェニックス主演で、Siriに恋する話のようです。ホアキンはアカデミー賞をディスってるからか、去年は受賞できず、今年は主演候補からも外れました。脚本賞で最有力とのこと。『脚本賞は「ハリウッドへようこそ」という意味が含まれるので、時期的にスパイク・ジョーンズ』と、ニコ生で聞いたので。
また、アメリカンハッスルと今作も例のボンボン娘が金払ってます。ありがと。
herです。

2014年2月2日日曜日

恋はデジャ・ブ(1993)

タイトルからして普通の感性を持った人なら一生見ない作品だが、かなりの良作である。監督はゴーストバスターズ(1984)脚本とバスターズのメガネのメンバー役でも出演のハロルド・ライミス、主演も同じくバスターズのビル・マーレイ。
存在は知っていたが、鑑賞したのは最近だ。見ようと思ったきっかけは、映画評論家・町山智浩さんのミッション8ミニッツ(2011)の解説動画で、今作が元ネタであると紹介されていたからである。ミッション8ミニッツ、そして今作は、ある区切られた時間が無限にループしていくというもの。
うる星やつら2ビューティフルドリーマー(1984)や、今月公開されるハウンター(2013)、内容よりも「日本のラノベが高バジェットでトムクルにより映画化される」という夢を与えた、オール・ユー・ニード・イズ・キル(2014)等、無限ループものの作品はいくつかある。何せ同じことの繰り返しなので撮影が楽である。その中でも今作は特に支持が厚いようだ。
俺が初めて見た無限ループものは、ウンナン内村主演による世にも奇妙な物語「そして、くりかえす」(1998)である。彼女にフラれ、勤め先の会社も倒産しかけのウツな内村が、なぜかひたすらループされる毎日にはまってしまう。初めは倒産を回避させたり良い事をしようとするものの、リセットされては何をしても無意味と、ヤケになり、ギャンブルで高額を得たり、得た金を使ってクラブの女をナンパをしたりするが、空しさしか残らない。そんなことを赤ちょうちんでグチっていたら、毎日隣に座っていた酔いつぶれた男も「実は自分も同じ境遇である」と明かす。去っていくその男に話を聞くため、引きとめようとするも、彼は工事現場で鉄骨が落ちてくる時間を知っていることを利用して、自殺。内村も同じ方法での自殺を決意し、決行するも、また結局同じ朝に戻ってしまう。完。というもの。
恐怖と羨ましさが同時に襲ってきた感覚は生まれて初めてだったので、世にも奇妙の中でも、やけにこの話は覚えている。まぁそんだけ詳しく覚えているのはデイリーモーションで先ほど見たからである。そしてネタ元である今作を見て、今度は驚きと悲しみが同時に襲ってきた。内村の方、完全に今作のパクリだったのだ。内村の会社は潰れかけているので、出社してもしなくても自由に一日を過ごせるということと、同じ状況の男の出現。新しいアイデアはこれだけである。
つまり今作も内容は同じく、主人公である天気予報士・ビルマーレイが取材に来た田舎町で、同じ毎日を繰り返してしまう。吹雪により道が封鎖されてしまい、街からは出られないというもの。場所設定以外は内村と同じなので、前半の展開に驚きは無い。内村と同じく自殺しようとするが、また同じ朝を迎えてしまう。しかしここから、自殺不可なことに気付いてからの展開がすばらしい。ゴーストバスターズ的な軽いノリで、ものすごく濃く人間を描いている。
始め主人公は、繰り返しの中で得たデータで、メンタリストDaigo的なナンパをすること以外に情熱を持てなかった。「これがメンタリズムです」とばかりに、セックス。エロ以外では斜に構えて田舎者を人間観察しておちょくる、リリーフランキー的なノリというか、揚げ足を取ってはツッコむニコ動的ノリ、つまり、いつものビルマーレイだったのだが、暴食や破壊やワンチャンの繰り返しの中、大きな壁、「壁」っていっても口説けない女のことだが、どう頑張っても上澄みだけでは彼女が落とせないという壁にぶち当たる。自殺もできずヤケになるが、それさえも乗り越えるとスッと煩悩が無くなる。
口説くことを止めてからは、ホームレスの死もきっかけとなり、少しでも街全体を良くしよう、そして毎日少しずつ色々なことを訓練して自分を高めようと、向上し始め、やがてピュアで前向きなすばらしい人間になるのである。ポテンシャルが、素質が、基礎体力そのものが変わってしまうのである。そんな人間がピュアになるかと疑うかもしれないが、ビルマーレイは元々好きな女の為に変わっていったのである。恋愛感情は世界を変えるのである。これを17分の世にも奇妙ごときに上澄みだけもってくのは、この映画のメッセージと間逆の事をしているのである。
世にものバカな脚本と違い、街にビルマーレイの車が入るシーンで街の人口が「6782人」であることを何気なく看板で提示して、舞台設定が非常に小さいことを示したり、相手にあった口説き文句を探る箇所では、コメディシーンだとわからせるために昔のコントのような編集にしたり、モノローグを無くして説明不足にさせ、科学的にループになった理由は?とか、愚問を観客に抱かせなかったりと、小手先のテクニックも憎らしいほどすばらしいのである。
だがふと疑問がわく。前の性格もよかったんじゃねーの?ということである。しかしそろそろ僕らも大人である。わかりやすく考えるなら、ふかわりょうのような人間と中山秀征のような人間、どちらになりたいか。どちらで居るべきかということである。
ふかわは才能もあっておもしろいかもしれないが、ディレクターの「これやってください」に対して、寒いと思ったらやらないだろう。そして後でこそこそバカにするだろう。一方微塵も面白くないヒデちゃんだが、ディレクターの指示には明るく何でも答えてくれる。恨みも持たれず、みののおもいっきりテレビを引き継いで当然の男である。片やふかわ、都民税で作られたテレビ局とラジオ以外、レギュラーはあるのだろうか。そろそろふかわからヒデちゃんにならないと、このまま孤独死を迎える。この作品はヒデを認め、ヒデになる話だったのだ。
自分は今の性格のままおっさんになってしまうのだろうかと、少しでも考えたことがある人なら是非とも鑑賞してほしい。三代目組長になったヒデは彼女をゲットできるのか?ぜひその目で確かめて欲しい。「静かなるドン」絶賛絶版中!
※ちなみに全く意識してなかったが、ビルマーレイが繰り返す日はこのブログと同じく2月2日である